延滞2日目

浅く狭く思いつくままに

「私を離さないで」

 人生嫌なことがあると本を読みたくなりますよね。ちょっと暗めの内容が個人的には好きです。今回は、家族や知人に激推しされていたけど、なかなか読めなかった、カズオ・イシグロの「私を離さないで」を読みました。

 

 「主人公たちはクローン人間で、臓器提供をするために学園で育てられている」という壮大なネタバレを家族に事前にぶち込まれていましたが読むことに。でも、これ全然ネタバレじゃなかった。おそらくほとんどの人は、読み始めて一瞬で臓器提供の話だと分かります。どんでん返しがあったり、大きく展開が変わるようなことはなく、ただ淡々とクローン人間として生きていく主人公たちの姿が描かれています。

 

 語り手は主人公のキャシー。へールシャムでの学園生活、卒業してからの数年間を思い出しながら語ります。「先を見るのではなく楽しかった日々を振り返る」。提供を前にしたキャシーが物語の語り手だからか、常に寂しく暗いイメージが作品に影を落としています。

 

 クローン人間が作られた近未来的世界なのにも関わらず、キャシーたちが過ごす場所や車に乗って走る道、旅先の全てが廃れている。彼女たちは普通の人たちの世界に意図して近づかなかったのか、隔離されていたのか...。キャシーの口から真実は語られていません。

  

 WIREDでカズオイシグロは

『わたしを離さないで』では、「自分の生の時間が限られている」という感覚と「世界は可能性に満ちている」という思いとが同時に心のなかで起こったとしたらどうなるだろうという問いがありました。

と話しています。この二つを同時に描くためにはクローン人間という設定が必要だった。なるほど。「医療技術発展への警鐘」「生命倫理」などの言葉でこの小説は語れませんね。

wired.jp

 カズオ・イシグロの作品を他にも読んでみようと思います。おすすめがあれば教えてください。それでは。